うさぎの避妊は必要とよく聞くけど…去勢も必要?病気は多いのか?
初めてオスのうさぎを飼い始めた飼い主さんが悩みを抱える問題ではないでしょうか。
去勢は妊娠の予防だけでなく、問題行動や病気の予防にも役立ちます。あまり知られていませんが、うさぎの精巣も悪性の癌になる可能性もあります。
うさぎの診療において、発情ストレスによる問題行動の相談がとても多く、去勢の必要性を感じます。
今回はうさぎの去勢のメリット・デメリットについて解説します。
去勢の目的は3つ
『去勢』とは、手術にて精巣を摘出すること。
その目的は以下の通りです。
- 妊娠の予防
- 問題行動の抑制
- 病気の予防
この中でも、問題行動の抑制を目的として去勢を行う方が多いです。
去勢のメリット
妊娠の予防
うさぎは繁殖能力が高く、多産の動物です(産子数は4~10匹)。早くて生後7~8ヶ月で性成熟を迎え、一年中いつでも繁殖が可能になります。
特に同居で女の子がいる場合は注意が必要。お部屋で散歩していた時や脱走してしまっていた時など短時間(1~2分)で交尾は完了します。
妊娠を望まない場合は早めの去勢を考えましょう。
問題行動の抑制
うさぎは一年中発情できるため、発情によるストレスを抱えやすい動物です。
発情が落ち着けば、一時的に問題行動が消失しますが…。次の発情がすぐに始まるため行動は繰り返しとなり、終わりがみえません。
問題行動は以下が挙げられます。
- バーバリング(毛引き)
- マーキング行動(スプレー)
- 攻撃性の上昇
- マウンティング etc
それぞれの問題点について詳しく考えてみましょう。
バーバーリング(毛引き)
自身の毛を噛んだり舐めたりすることで、脱毛や皮膚の赤みを引き起こします。脱毛は首もとから足先まで様々な部位に生じます。お薬では改善しないため、去勢の実施を検討しましょう。
ひどい場合は、皮膚や筋肉も食いちぎる自咬にまで発展し、早急な去勢の実施が必要となります。
マーキング行動(スプレー)
いつもはトイレでしているのに、突然失敗する頻度が高くなった経験はないでしょうか。匂い付けを目的として様々な場所でおしっこをとばすようになり、お部屋が汚れてしまうことがあります。去勢の実施により、改善するかもしれません。
ほとんどは去勢にて解決しますが、中には行動が残ってしまう場合もあります。
攻撃性の上昇
発情のストレスにより攻撃性が増すことで、飼い主さんを威嚇したり、噛むようになることがあります。来院された飼い主さんの手には痛々しい傷も…。お互いを守るためにも去勢は役立ちます。
去勢を考えて来院される理由として、一番多い問題です。
マウンティング
マウンティングは雄で特徴的な発情行動です。飼い主の手や足、時にはぬいぐるみ等のおもちゃにまたがり、腰を振り続ける行動がみられます。これらの行動は持続的に行われるため、うさぎ自身もかなり体力を消耗します。日々の無駄な体力の消耗を避けるためにも去勢をおすすめします。
行動がピークに達すると射精が生じたり、中には失神にまで至ることも。
病気の予防
うさぎの精巣は高齢になるにつれて、変化がみられるようになります。精巣が膨らみ大きくなることで飼い主さんが気付く場合が多いです。膨らんだ精巣により、陰嚢に便が付着しやすくなり衛生面に問題が生じる他、床に擦れて出血する場合も。また、見た目に変化がなく、精巣が硬いだけの場合もあるため注意が必要です。
統計的に悪性の癌が多くはないですが、良性と悪性どちらも生じる可能性はあるため注意。
去勢のデメリット
麻酔のリスク
ほとんどの方が気にされていることが麻酔のリスクになります。
薬である以上、「麻酔は100%安全です」とは確かに言えません。
ですが、最大限の安全を確保するために事前検査(X線検査、血液検査等)を行うことが通常です。結果に異常がなければ、安心して手術を受けていただければと思います。
精巣は高齢になってから問題が生じることが多いです。言い換えると、高齢になってから麻酔をかけて手術する必要が出てくるということです。麻酔のリスクを考えた場合、若い時よりもリスクが増すことは明らかです。
若いうちに病気の予防として去勢を考えることも選択肢の1つ。
肥満傾向になりやすい
今まで発情に使っていたエネルギーを消費しなくなるため、同じごはんの量を与えていると太りやすくなる傾向があります。必ずしも太るわけではないため、去勢後は定期的な体重測定を行い、かかりつけの先生と相談しながら経過を観察することをすすめます。
予め食べているペレットの1日量を計測しておくと、減量が必要な際に具体的な量を指示できます。
去勢の注意点
去勢後しばらくは妊娠可能
去勢後すぐに同居の雌と一緒にしようとする飼い主さんがいます。しかし、去勢後すぐはまだ副生殖腺に精子が残っているため、妊娠させてしまう可能があります。しばらくは同居の女の子と合わせないようにしましょう。
必ずしも発情が問題行動の原因であるとは限らない
問題行動は去勢を行うことで行動がほとんど消失します。しかし、発情だけが行動の原因ではなく、もとの性格による場合も…。去勢の実施が必ずしも改善に繋がらないことは注意が必要です。
性格が変わったように感じる
発情により飼い主さんにまとわりつくような行動を取るうさぎが多いです。その行動を人懐っこい性格であると勘違いされ、去勢後に性格が変わってしまったと感じる飼い主さんもいます。去勢により変わったのではなく、発情の影響であることを知っておきましょう。
去勢をしてもケンカは起こる
去勢をして発情が落ち着けば同居ウサギとのケンカが必ずしも減るわけではありません。相性によるところが大きいため、注意が必要です。
若いうさぎでも潜在精巣には注意
精巣は産まれた直後はお腹の中にあり、10~12週齢で陰嚢に下降します。潜在精巣とは、4ヶ月経っても陰嚢に下降せず、お腹の中に精巣が留まっている状態をといいます。片方だけ、または両方とも下降しない場合もあります。
うさぎではその病態はわかっていませんが他の動物では癌化する可能性が高いことが知られています。潜在精巣は早めの去勢を考える必要があるでしょう。
まとめ
うさぎの飼育頭数が増えている中、去勢の必要性は一般的に知られておらず、うさぎを飼い始めた多くの飼い主さんを悩ませています。
去勢のメリットは次の3つです。
- 妊娠の予防
- 問題行動の抑制
- 病気の予防
発情によるストレスを抱えやすく、様々な問題行動が生じます。問題行動は、飼い主さんを悩ますだけでなく、うさぎの身体への影響も大きいことを知りましょう。
潜在精巣は他の動物では癌化する可能性高く、若いうさぎにも注意が必要です。
去勢のデメリットは次の2つです。
- 麻酔のリスク
- 肥満傾向になる
麻酔は100%安全ではありません。
精巣は高齢になって問題が生じるため、若いうちの去勢をすすめます。
去勢がすべての問題行動の解決にはならない場合があることは注意が必要です。
総合的なメリットを踏まえて実施を判断しましょう。
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