イヌやネコでは避妊の話をよく聞くけど…うさぎにも避妊って必要?
うさぎを飼い始めた多くの飼い主さんが悩みを抱える問題ではないでしょうか。
うさぎの飼育頭数が増えている中、避妊の必要性は一般的に広く知られていないのが現状です。
うさぎの避妊は妊娠の予防や問題行動の抑制だけでなく、病気の予防にも役立ちます。うさぎの子宮は癌になる可能性が特に高いため、避妊の有無が今後の寿命にも関わることも…。
私は獣医師としてうさぎの診療を行う中で、避妊の必要性を強く痛感しています!
今回はうさぎの避妊のメリット・デメリットについて解説します。
避妊の大きな目的は病気の予防
『避妊』とは、手術にて卵巣および子宮を摘出することを意味します。
その目的は以下の通り。
- 妊娠の予防
- 問題行動の抑制
- 病気の予防
この中でも、特に病気の予防が大きな目的となります。
避妊のメリット
妊娠の予防
うさぎは繁殖能力が高く、多産の動物です(産子数は4~10匹)。早くて生後4~6ヶ月で性成熟を迎え、一年中いつでも繁殖が可能になります。
特に同居で男の子がいる場合は注意が必要。お部屋で散歩していた時や脱走してしまっていた時など短時間(1~2分)で交尾は完了します。最近お腹が大きくなってきた気がするとのことで病院を受診され、妊娠が発覚することも少なくありません。
そして出産は母子ともに当然リスクがあり、最悪亡くなってしまうケースも…。無事に母子ともに健康に産まれた場合でも、産まれた子うさぎの面倒をみていく覚悟が必要です。
妊娠を望まない場合は早めの避妊をおすすめします。
発情による問題行動の抑制
うさぎは一年中発情できるため、発情によるストレスを抱えやすい動物です。
発情が落ち着けば、一時的に問題行動が消失しますが…。次の発情がすぐに始まるため行動は繰り返しとなり、終わりがみえません。
問題行動は以下が挙げられます。
- バーバリング(毛引き)
- マーキング行動(スプレー)
- 攻撃性の上昇 etc
それぞれの問題点について詳しく考えてみましょう。
バーバーリング(毛引き)
自身の毛を噛んだり舐めたりすることで、脱毛や皮膚の赤みを引き起こします。脱毛は首もとから足先まで様々な部位に生じます。お薬では改善しないため、去勢の実施を検討しましょう。
ひどい場合は、皮膚や筋肉も食いちぎる自咬にまで発展し、早急な避妊の実施が必要となります。
マーキング行動(スプレー)
いつもはトイレでしているのに、突然失敗する頻度が高くなった経験はないでしょうか。匂い付けを目的として様々な場所でおしっこをとばすようになり、お部屋が汚れてしまうことがあります。去勢の実施により、改善するかもしれません。
ほとんどは避妊にて解決しますが、中には行動が残ってしまう場合もあります。
攻撃性の上昇
発情のストレスにより攻撃性が増すことで、飼い主さんを威嚇したり、噛むようになることがあります。来院された飼い主さんの手には痛々しい傷も…。お互いを守るためにも避妊は役立ちます。
もとの性格による場合もあり、必ず改善するわけではないことは注意が必要。
病気の予防
うさぎは子宮の病気が多い動物です。3歳以上の雌は良性や悪性問わず、何かしらの子宮の病気になることが統計的にわかっています。さらにそのうちの多くは悪性の癌であることもわかっています。また子宮の癌は転移しやすく、肺や肝臓、骨といった臓器に転移する可能性が高いです。
今現在、子宮の癌に対しての有効な治療法はないため、根治は難しく死に至る病気です。長く一緒に過ごすことを考えるのであれば、避妊をおすすめします。
避妊は乳腺腫瘍の予防にもなる。
また、うさぎに特徴的な子宮の病気として、子宮からの急な不正出血があります。うさぎには生理がないため、出血は異常な状態であることを意味します。出血量が多い場合はすぐに命に関わることもありえる状態です。ご心配な方は早めの避妊をおすすめします。
不正出血は年齢に関わらず生じる可能性があり、1歳以下で症状が現れることも!
避妊のデメリット
麻酔のリスク
避妊相談の際に多くの方が気にされていること、それが麻酔のリスクです。
薬である以上、「麻酔は100%安全です」とは確かに言えません。
ですが、最大限の安全性を確保するために、事前検査(X線検査、血液検査等)を行うことが通常です。検査結果に異常がなければ、限りなくリスクは低いため、安心して手術を受けていただければと思います。
今後の寿命を考えた場合、麻酔のリスクよりも子宮を残しているリスクの方が高いと判断できるでしょう。
それでも麻酔のリスクが気になって迷ってしまう方、実際に必要になった時の状態を考えましょう。
例えば…子宮の不正出血により緊急手術が必要になった場合。内科治療(止血剤の投薬)は効果がなく、手術による子宮の摘出でなければ出血は止まりません。ただし、貧血であることは麻酔のリスクが健康な状態よりも高くなります。
どうでしょう、健康な状態で麻酔をかける方がリスクが低くなりますよね。
麻酔は嫌という一時の感情ではなく、総合的なメリットを考えてみてください。
肥満傾向になりやすい
今まで発情に使っていたエネルギーを消費しなくなるため、同じごはんの量を与えていると太りやすくなる傾向があります。必ずしも太るわけではないため、避妊後は定期的な体重測定を行い、かかりつけの先生と相談しながら経過を観察しましょう。
予め食べているペレットの1日量を計測しておくと、減量が必要な際に具体的な量を指示できます。
まとめ
うさぎの飼育頭数が増えている中、避妊の必要性は一般的に知られておらず、うさぎを飼い始めた多くの飼い主さんを悩ませています。
避妊のメリットは次の3つです。
- 妊娠の予防
- 問題行動の抑制
- 病気の予防
子宮の病気は多く、悪性の癌にもなりやすいため、早めの避妊が必要。
避妊のデメリットは次の2つです。
- 麻酔のリスク
- 肥満傾向になる
麻酔は100%安全ではありませんが、麻酔のリスクよりも子宮を残しているリスクの方が大きいと判断できます。
避妊を決断する際には総合的なメリットを考えましょう。
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